低圧系統用蓄電池への設備投資を検討する際、「土地を所有している必要があるのか」「どのような方法で導入するのか」と疑問を持つ方もいます。
一般的に思い浮かぶのは、保有する土地に蓄電設備を導入する方法です。それ以外にも、用地探しから導入までを一式で依頼する方法や、用地・設備付き案件を購入する方法があるため、土地を保有していない法人でも設備投資を検討できます。
この記事では、用地の有無や設備の所有方法をもとに、低圧系統用蓄電池の主な導入・参加方法と、選ぶ際の確認ポイントを解説します。
- この記事でわかること
- 低圧系統用蓄電池の導入方法
- 自社用地へ設備を導入する方法
- 用地探しから一式で依頼する方法
- 用地・設備付き案件を購入する方法
- 設備を所有せずに蓄電池事業へ参加する方法
- 導入方法を選ぶ際の確認ポイント
低圧系統用蓄電池の導入方法は主に3つ
低圧系統用蓄電池は、産業用電気設備を取り扱う販売店や専門の施工会社を通じて購入できますが、それだけでは運用を開始できません。
設置する土地の選定や蓄電設備の設計・施工に加え、電力系統に接続するための系統連系手続きや、運用・保守体制の構築など、蓄電池を稼働させるための環境の整備が必要です。
こうした工程を含めた導入方法には、次の3つがあります。
- 自社用地に蓄電設備を設置
- 用地探しから導入まで一式で依頼
- 用地・設備付きの案件を購入
用地を保有しているか、設計・施工や各種手続きをどこまで事業者に任せるかによって、適した方法は異なります。
① 自社用地に蓄電設備を設置
自社用地に導入する場合、遊休地などの保有資産を生かすことができます。
ただし、土地の適性確認、設備設計、施工、系統連系手続きなど、導入準備への関与が大きくなるため、対応が難しい部分は販売事業者や関係事業者に依頼し、役割分担を明確にしたうえで進める必要があります。
自社用地でも適性確認は必須
系統用蓄電池は電力系統へ接続して使用するため、空いている土地であっても、必ず設置・接続できるとは限りません。土地が設備の設置条件を満たしているか、系統連系が可能かを事前に確認する必要があります。
- 設備本体や関連機器、保守スペースを確保できるか
- 設備の搬入、工事、保守に必要な動線があるか
- 地盤や造成、排水に問題がないか
- 浸水や土砂災害などの災害リスクに対応できるか
- 系統連系が可能か、接続にどのような工事や費用が必要か
- 土地利用、開発、建築、消防などの法令や条例に適合するか
- 周辺の住宅や施設に対する騒音、防災、工事上の問題がないか
設置候補地では、導入前に次のような点を確認します。
土地の適性は、販売事業者や施工事業者に確認し、必要に応じて自治体や消防機関などへ相談します。
系統連系については、連系先となる一般送配電事業者が定める手続きに従い、申込みや技術協議を進める必要があります。
低圧系統用蓄電池の設置可否は、土地の広さだけで判断できません。地盤や搬入経路、災害リスク、法令上の制限、系統連系の可否など、詳しい確認項目は以下の記事で解説しています。
自社用地へ導入するメリット
保有地を利用する場合、新たに土地を取得する費用や、土地を借りる場合の賃料を抑えられます。使用予定のない土地を設備用地として利用できるため、保有資産の新たな活用方法にもなります。
土地の取得・賃借にかかる負担を抑え、保有地を設備投資に生かしたい法人に適した方法です。
② 用地探しから稼働開始までまとめて依頼
低圧系統用蓄電池を設置する土地を保有していない場合や、導入準備をまとめて任せたい場合は、用地探しから稼働開始までをまとめて依頼できる事業者もあります。
事業者によっては、自社用地への設備導入にも対応しているため、土地を保有する法人にとっても選択肢になります。
依頼できる主な内容
サービス内容は事業者によって異なりますが、用地探しや設備導入プランの作成に加え、不動産会社、施工会社、アグリゲーターなどの関係事業者との調整もまとめて依頼できます。
- 候補地の選定と土地所有者との調整
- 設備仕様や導入プランの検討
- 設備設計と施工の手配
- 一般送配電事業者への系統連系手続き
- アグリゲーターの選定と運用体制の構築
- 保守、運用管理、蓄電池運用の外部委託
サービス内容は事業者により異なりますが、以下のような例があります。
依頼する際の注意点
「導入から稼働まで支援」と案内されていても、実際に含まれる業務や費用は事業者ごとに異なります。
事業者を自由に選べない場合もあるため、契約前に役割分担や運用体制の確認が重要です。
- 土地は購入するのか、賃借するのか
- 土地代、賃料、紹介料、仲介手数料は提示価格に含まれるか
- 系統連系に関する負担金や手続き費用を含むか
- 造成や追加工事が発生した場合の費用負担
- 施工会社やアグリゲーターを選択でき、契約手続きまで依頼できるか
- 保守、保険、通信、運用管理、稼働後のトラブル対応を含むか
初期費用や追加費用だけでなく、契約後の役割分担、運用体制、継続的に発生する費用まで確認することが重要です。
まとめて依頼するメリット
用地探し、設備選定、施工、系統連系手続き、運用事業者との調整を個別に進める必要がないため、事業者の選定や調整にかかる負担を抑えやすい点がメリットです。
事業者によっては、稼働後の保守や運用管理まで依頼できるため、社内の対応負担を抑えながら導入を進められます。
用地探しや複数事業者との調整、稼働後の運用体制の構築までまとめて依頼したい法人に向いています。
③ 用地・設備付き案件を購入
用地の確保や設備計画、系統連系手続きなどが、一定段階まで進められた案件を購入する方法です。候補地と設備計画がセットになった案件のほか、工事中の案件や、すでに稼働している設備を購入するケースもあります。
用地探しや設備計画を一から進める負担を抑えられる一方、購入時点での準備状況や設備条件は案件ごとに異なります。
案件の進行状況と設備仕様に注意
進行状況がそれぞれ異なるため、購入後に必要となる手続きや、稼働開始までのスケジュール確認が必要です。
すでに用地や設備仕様、施工体制などが決まっている案件では、購入後に変更できる範囲が限られる場合があります。
アグリゲーターや保守事業者の選定、想定収益の前提条件なども、契約前に確認が必要です。
購入価格や設備仕様、提示される想定利回りや収益見込みだけでなく、引き渡し時点での準備状況、残っている手続き、稼働後の運用体制まで確認しましょう。
用地・設備付き案件を購入するメリット
用地の確保や設備計画が進んでいる案件を購入するため、土地探しや関係事業者との調整を最初から行う負担を抑えられます。
さらに、複数の候補案件がある場合は、設置地域、設備仕様、購入価格、準備状況、運用開始予定時期などを比較して投資判断が可能です。
土地探しや設備導入の準備にかかる負担を抑え、条件の合う蓄電池設備案件を選んで購入したい法人に適した方法です。
3つの導入方法を比較
| 導入方法 | 用地 | 向いている法人 | 確認点 |
|---|---|---|---|
| 自社用地に導入 | 自社保有 | 保有地を生かしたい法人 | 設置条件、系統連系、施工条件 |
| まとめて依頼 | 自社用地または事業者と探す | 導入までまとめて任せたい法人 | 支援範囲、追加費用、契約条件 |
| 案件を購入 | 所有権または利用権付き | 準備が進んだ案件を取得したい法人 | 権利関係、進捗、引き渡し条件 |
導入方法だけでなく、支援範囲や契約条件も比較し、信頼できる事業者を選ぶことが重要です。
その他の方法:設備を所有せずに蓄電池事業へ参加
低圧系統用蓄電池では、自社で設備を購入・所有せずに、関連事業へ資金や土地を提供する方法もあります。代表的な選択肢は、ファンドなどを通じた出資と、保有地の貸し出しです。
ファンドなどを通じて出資
蓄電池事業を投資対象とするファンドなどへ出資し、契約条件に応じて分配を受ける方法です。自社で用地を確保したり、設備の導入や運用を行ったりする必要はありません。
ただし、投資対象や収益構造は商品ごとに異なり、電力市場で得られた収益がそのまま出資者への分配原資になるとは限りません。
投資対象、分配原資、運用期間、手数料、途中解約の条件、元本毀損リスクなどの事前確認が重要です。
保有地を蓄電池事業者へ貸す
自社で設備を購入せず、保有する土地を蓄電池事業者へ貸し出す方法です。土地所有者は賃貸借契約に基づいて賃料を受け取り、設備の購入、施工、保守、運用などは事業者側が行います。
設備投資や電力市場での運用を自社で行わずに、保有地を活用できる点がメリットです。ただし、系統への接続可能性、土地の広さ、接道、法令上の制限などによっては、蓄電池の設置用地として利用できない場合があります。
賃貸借期間、賃料の条件、中途解約、契約終了後の設備撤去、原状回復、土地に関する責任の範囲を契約前に確認する必要があります。
3つの導入方法を比較
どの導入方法が適しているかは、自社の投資目的、資金計画、社内体制、設備を所有するかどうかを踏まえて判断する必要があります。
用地を所有しているか
利用可能な土地を保有している場合は、自社用地への設備導入や、蓄電池事業者への土地の貸し出しを検討できます。土地を所有していない場合も、用地探しから依頼する方法や、用地・設備付き案件を購入する方法が候補になります。
設備を自社資産として保有したいか
設備を自社で所有する場合は、電力市場での運用による収益を目指せる一方、設備の取得費用や運用費用を負担し、故障や経年劣化などのリスクも負います。
設設備を所有しない場合は、設備の導入や管理にかかる負担を抑えられます。ただし、ファンドへの出資では投資商品の契約条件、土地の貸し出しでは賃貸借契約の内容によって、得られる収入や関与できる範囲が決まります。
導入準備はどこまで対応するか
自社用地へ導入する場合は、設備会社や施工会社、アグリゲーターなどとの事業者への調整が必要です。
事業者との調整も任せる場合や、用地・設備付き案件を購入する方法では、自社の作業負担を抑えやすい一方、支援事業者や売主が提示する条件を十分に確認する必要があります。
収益とリスクをどう考えるか
設備を自社で所有する場合は、電力市場の価格や運用状況によって収益が変動します。一方、ファンドへの出資では契約条件に基づく分配金、土地の貸し出しでは賃貸借契約に基づく賃料が主な収入になります。
想定される収入だけでなく、収益の変動性、契約期間、必要な費用、元本毀損や設備故障などのリスクも比較することが重要です。
導入時の負担だけでなく、稼働開始後の収益見通し、投資回収期間、保守・運用費用まで含め、事業期間全体で判断することが重要です。
収益シミュレーションは、投資回収期間や設備の経年劣化による収益低下、保守・管理費用まで見込んだ内容になっているか確認しましょう。
JMSの低圧系統用蓄電池導入サポート
JMSでは、低圧系統用蓄電池の導入を検討する法人に対し、用地の有無や投資目的を確認したうえで、設備導入から運用体制の構築まで支援しています。
蓄電池事業では、設備の選定だけでなく、用地の確保、施工、系統連系手続き、アグリゲーターとの連携など、複数の事業者との調整が必要です。
JMSが窓口となり、導入条件に応じて関係事業者との調整や必要な手続きを進め、運用開始に向けた体制構築を支援します。具体的なサービス内容を知りたい方は、以下のページもあわせてご確認ください。
検討前に押さえておきたい関連テーマ
導入を検討する際は、以下の記事もあわせて確認すると、低圧系統用蓄電池の仕組みや収益モデルへの理解を深められます。
まとめ
低圧系統用蓄電池の導入は、自社用地への設備導入、用地探しから稼働開始までまとめて依頼する方法、用地・設備付き案件を購入する方法があります。土地を保有していない場合でも、事業者が案件を使うことで、設備導入が検討できます。
また、設備を所有せず、ファンドへの出資や保有地の貸し出しを通じて蓄電池事業に関わる方法もあります。ただし、設備の市場運用による収益、ファンドからの分配金、土地の賃料では、収入の仕組みや負担するリスクが異なります。
導入・参加方法を選ぶ際は、用地の有無だけでなく、設備を所有する目的、資金計画、導入準備への関与度、稼働後の管理体制まで踏まえて判断することが重要です。