低圧系統用蓄電池を電力市場で運用する際は、設備の販売・施工に加え、「アグリゲーター」と呼ばれる事業者が関わります。
アグリゲーターは、低圧系統用蓄電池の市場参加や運用を支える重要な存在です。しかし、設備投資を初めて検討する法人にとっては、何をする事業者なのか、なぜ必要なのか、どのように契約するのかがわかりづらい点があります。
この記事では、アグリゲーターの基本的な役割、低圧系統用蓄電池に必要とされる理由、主な業務、契約方法、契約時の注意点を解説します。
- この記事でわかること
- アグリゲーターの基本的な役割
- 低圧系統用蓄電池にアグリゲーターが必要な理由
- アグリゲーターが行う主な業務
- アグリゲーターとの契約方法
- 契約時に確認すべき費用や役割分担
アグリゲーターとは
アグリゲーターとは、蓄電池、発電設備、電気自動車、空調設備などの分散型エネルギーリソースを束ね、電力の需給状況に応じて制御する事業者です。
複数の小規模な設備を通信システムでつなぎ、一体的に管理することで、まとまった電力として電力取引や需給調整に活用します。
資源エネルギー庁では、電力分野におけるアグリゲーター等の役割を、「リソースアグリゲーター」と「アグリゲーションコーディネーター」に分けて整理しています。
需要家と直接契約し、設備を制御する事業者が「リソースアグリゲーター」、制御された電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者などと取引する事業者が「アグリゲーションコーディネーター」です。
分散型エネルギーリソース企業や家庭などに分散して設置され、発電、蓄電、電力使用量の調整に活用できる設備。
需要家電力の供給を受け、家庭、事業所、工場などで電気を使用する個人や法人。
低圧系統用蓄電池におけるアグリゲーターの役割
低圧系統用蓄電池の導入・運用には、複数の事業者が関わります。
- 販売事業者:設備導入の提案、シミュレーション、他事業者との窓口
- 施工事業者:蓄電池や関連設備の設置、電気工事
- 設備メーカー:蓄電池、PCS、制御機器などの供給
- 保守事業者:設備点検、修理、部品交換
- アグリゲーター:設備の監視・制御、電力市場での運用
主な事業者と一般的な役割は次のとおりです。
同じ事業者が複数の役割を担う場合もあります。
このうち、アグリゲーターは、蓄電池の状態や充電残量を確認しながら充電・放電を制御し、電力市場への入札、運用実績の集計、収益の精算などを行います。
アグリゲーターは、市場参加を仲介するだけでなく、蓄電池を遠隔で監視・制御し、市場取引につなげる役割を担います。
低圧系統用蓄電池にアグリゲーターが必要な理由
小規模な設備をまとめて電力市場へつなぐ
電力市場には、取引する商品ごとに、最低入札量や設備性能などの参加要件があります。
低圧系統用蓄電池は、高圧・特別高圧の系統用蓄電池と比べて、1拠点あたりの出力や蓄電容量が小さく、単独では最低入札量に届かない場合があります。
電力需給調整力取引所では、電力市場の一つである需給調整市場について、蓄電池などの低圧リソースが所定の要件を満たすことで参加できると示しています。
1拠点では最低入札量に届かない場合でも、複数の蓄電池を束ねて必要な取引量を確保することで、要件を満たすことが可能です。
ここがアグリゲーターの役割です。複数の低圧系統用蓄電池を一体的に管理し、単独では市場参加が難しい小規模な設備を需給調整市場へつなぐ運用体制を構築します。
参考元:電力需給調整力取引所「よくあるご質問」
https://www.eprx.or.jp/contact/jukyuchoseishijo/faq.html
市場取引に必要な手続きを担う
電力市場で蓄電池を運用するには、充電・放電するだけでなく、入札、計画の提出、市場からの指令への対応、運用実績の管理、収益の精算などが必要です。
また、需給調整市場で取引する事業者には、電力需給調整力取引所の取引会員資格が求められます。
アグリゲーターがこうした手続きや運用実務を担うことで、蓄電池オーナーは市場に直接参加せずに、低圧系統用蓄電池を運用できます。
複数の設備を一体的に監視・制御する
資源エネルギー庁は、アグリゲーターについて、多くの需要家やエネルギーリソースを束ね、取引の流れをコントロールする「司令塔」の役割を担うと説明しています。
アグリゲーターは、各設備の充電残量、出力、稼働状況、通信状態などを監視し、複数の設備を一つのリソース群として制御します。また、設備の故障や通信障害が発生した場合は、ほかの設備で補える範囲を踏まえ、市場へ提供する電力量を調整します。
参考元:資源エネルギー庁「VPP・DRの活用」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/negawatt.html
アグリゲーターの主な業務
蓄電池の状態を遠隔で監視する
アグリゲーターは、通信システムを通じて、各地に設置された蓄電池の状態を監視します。設備異常や通信障害を検知した場合は、運用を停止したり、販売事業者や保守事業者に対応を依頼したりします。
- 充電残量
- 充放電の出力
- 設備の稼働状況
- 異常の発生状況
- 通信状態
- 充放電の実績
主な監視項目は次のとおりです。
アグリゲーターが行う遠隔監視と、保守事業者が行う現地での点検・修理は役割が異なります。
設備異常を検知する事業者と、実際に現地で復旧作業を行う事業者が別になる場合もあります。
充放電を制御する
アグリゲーターは、電力価格、需給状況、充電残量、設備の稼働状態などを踏まえ、蓄電池に充放電の指令を送ります。
例えば、卸電力市場では、価格の低い時間帯に充電し、高い時間帯に放電します。
需給調整市場では、一般送配電事業者からの指令に応じて、複数の蓄電池の状態を確認し、どの設備をどの程度充放電させるかを判断します。
充放電のタイミングや運転条件は、得られる収益だけでなく、蓄電池の劣化や設備保証にも関係します。そのため、短期的な収益と長期的な設備運用の両方を踏まえた制御が求められます。
電力市場への入札や計画提出を行う
アグリゲーターは、複数の蓄電池から提供可能な電力量を算定し、対象となる電力市場への入札や計画の提出を行います。
市場や商品によって、入札量、応動時間、継続時間、計測方法などの条件は異なります。各設備の性能や稼働状況を踏まえ、実行可能な入札量や取引計画を定めます。
対応できる市場や運用方法は、アグリゲーターや設備構成によって異なります。
運用実績を集計し、収益を精算する
市場取引後は、充放電の実績や市場から得た収益を集計し、契約で定められた方法に基づいて、蓄電池オーナーへの支払額を算出します。
支払額は、市場収入からアグリゲーション手数料や運用費用などを差し引いて計算される場合があります。具体的な費用や精算方法は、契約内容によって異なります。
市場から得た総収入と、蓄電池オーナーが実際に受け取る金額は同じとは限りません。収益性を確認する際は、各種費用を差し引いた後の受取額を見る必要があります。
アグリゲーターの運用が収益を左右する理由
同じ仕様の低圧系統用蓄電池でも、参加する市場、充放電のタイミング、充電残量の管理方法などによって、運用結果は変わります。
例えば、電力価格が高い時間帯でも、蓄電池に十分な電力が残っていなければ放電できません。一方、放電に備えて多くの電力を蓄えていると、価格が低い時間帯に充電できる余地が減ります。
- 市場価格を踏まえた充放電の判断
- 参加する市場と入札方針
- 充電残量の管理
- 計画と実績のずれを抑える管理
- 通信・制御の安定性
- 設備劣化や保証条件を踏まえた運用
主に次の要素が収益に関係します。
アグリゲーターの運用方針や制御体制は、低圧系統用蓄電池の収益性に影響する要素の一つです。ただし、実際の収益は、市場価格、制度、設備性能、稼働状況などにも左右されます。
アグリゲーターとはどのように契約するのか
アグリゲーターとの契約方法は、事業者によって異なります。
- 販売事業者がアグリゲーション運用まで提供
- 販売事業者の提携先がアグリゲーション運用を担当
- 蓄電池オーナーがアグリゲーターと直接契約
代表的な形は次のとおりです。
アグリゲーターが蓄電池を遠隔で監視・制御するには、蓄電池本体やPCS、計測機器、通信機器などが、運用システムに対応している必要があります。すべてのアグリゲーターが、あらゆる設備に対応できるとは限りません。
このため、販売事業者や施工事業者から、導入設備に対応するアグリゲーターを含めた運用体制が提案される場合があります。主な形は、販売事業者が自社でアグリゲーション運用を提供する方法と、提携するアグリゲーターが運用を担当する方法です。
蓄電池オーナーがアグリゲーターと直接契約することも可能です。ただし、蓄電池やPCS、通信・制御システムが、契約先の運用環境に適合するかを事前に確認する必要があります。
検討の際に確認できる公表情報
特定卸供給事業に該当する事業を行う事業者には、経済産業大臣への届出が義務付けられています。資源エネルギー庁の「特定卸供給事業者一覧」では、届出を行った事業者を確認できます。
また、需給調整市場で取引を行うには、電力需給調整力取引所の取引会員になる必要があります。同取引所の「取引会員情報」では、現在の取引会員を確認できます。
ただし、これらは届出状況や取引会員資格を確認するための資料です。低圧系統用蓄電池への対応可否、導入設備との接続可否、契約条件、運用方法、収益試算の条件まではわかりません。
具体的な内容は、販売事業者やアグリゲーターへ個別に確認する必要があります。
参考元:資源エネルギー庁「特定卸供給事業者一覧」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/009/list/aguri-list.html
参考元:電力需給調整力取引所「取引会員情報」
https://www.eprx.or.jp/memberinfo/memberinfo.html
アグリゲーターとの契約時に確認すべき注意点
アグリゲーターとの契約後、業務の役割分担や費用、収益の精算方法、設備停止時や契約終了時の扱いを確認しておく必要があります。
契約書、見積書、収益シミュレーション、サービス仕様書などを通じて、具体的な条件を把握しておくことが重要です。
関係事業者の役割分担
アグリゲーターが遠隔監視や充放電の制御を担当していても、現地での点検や修理まで行うとは限りません。
- 設備の遠隔監視や充放電の制御を担う事業者
- 設備異常や通信障害が発生した際の連絡窓口
- 現地で点検や修理を担当する事業者
- 部品交換やメーカー保証の窓口となる事業者
契約前には、次の役割分担を把握しておきましょう。
設備異常が発生した際の連絡先と、点検・修理までの対応手順を明確にしておく必要があります。
費用と収益の精算方法
低圧系統用蓄電池の運用には、アグリゲーション手数料、遠隔監視・制御費、システム利用料、通信費、保守費などがかかります。
このため、収益シミュレーションや見積書を見る際は、市場から得られる総収入と、オーナーへの支払額を分けて把握します。
費用が「運用費」や「管理費」としてまとめて記載されている場合は、含まれる費用の内訳に加え、市場収入から控除されるのか、別途支払うのかを確認します。
- 収益の算出方法
- 手数料や費用の控除方法
- 精算の頻度と支払時期
契約前に押さえておきたい主な精算条件は、次のとおりです。
投資判断では、市場から得られる総収入ではなく、運用に必要な費用を差し引いた後の受取額を見ることが重要です。
設備停止時と契約終了時の扱い
設備故障や通信障害によって運用を停止すると、その期間の市場収入が減少します。一方、契約内容によっては、通信費や管理費などの固定費が停止中も発生します。
契約期間中に設備を売却する場合や、運用事業者を変更する場合は、解約条件や契約承継の扱いを確認する必要があります。
- 設備停止中に発生する費用
- 故障時の修理費や現地対応費
- 契約期間と更新方法
- 中途解約の条件や違約金
- 設備売却時の契約の扱い
次の条件は、契約書やサービス仕様書を通じて確認しましょう。
導入時の収益や費用だけでなく、設備を運用できない期間や、契約を終了する際の負担まで把握しておくことが重要です。
JMSの低圧系統用蓄電池運用サポート
JMSでは、低圧系統用蓄電池の導入を検討する法人に対し、設備導入からアグリゲーターとの連携、運用開始に向けた体制構築までサポートしています。
低圧系統用蓄電池を電力市場で運用するには、設備販売、施工、系統連系、通信、遠隔制御、市場取引、保守など、複数の事業者との調整が必要です。
JMSが窓口となり、導入条件や設備仕様、投資目的に応じて、設備導入から市場運用までに関わる事業者との調整を行います。
具体的なサービス内容や導入方法については、以下のページもあわせてご確認ください。
検討前に押さえておきたい関連テーマ
低圧系統用蓄電池の基本的な仕組みや収益化の考え方については、以下の記事で解説しています。
まとめ
アグリゲーターは、複数の蓄電池を束ね、設備の監視・制御や電力市場での取引実務を担う事業者です。
低圧系統用蓄電池は、単独では市場参加に必要な取引量に届かない場合があります。アグリゲーターは、複数の設備を一体的に管理し、小規模な蓄電池を電力市場へつなぎます。
参加する市場、充放電のタイミング、充電残量の管理、通信・制御体制によって、運用結果は変わります。そのため、アグリゲーターの運用方針や制御体制は、事業収益に影響する要素の一つです。